一貫性のある街をゼロからつくりあげていく
HARUMI FLAGは、18ヘクタール、東京ドーム3.7個分という広大な土地に、5,632戸という膨大な個数の住居が供給されます。また、そのための道路や公園、居住者のための共用施設なども同時に整備されるという巨大プロジェクトです。通常こうした巨大プロジェクトの場合、複数の工期に分けて開発と供給を行うのが一般的です。そうすることで売れ行きや経済状況などを見ながら、リスクを最小限に抑えていくわけです。
しかしHARUMI FLAGは「一貫性のある街をゼロからつくりあげていく」という目標の下、住居も設備もインフラも、すべて一気に開発するという異例のプロジェクトになりました。複数の工期に分けてしまうと、どうしても街の一貫性が欠けてしまう危険性があったからです。
一貫性を失わせるリスクはそれだけではありません。街の開発を行う際は、道路や公園などのインフラは東京都や中央区などの官が、住居や共有施設は事業者である民が、それぞれ作業を行います。すると、官と民それぞれの間で、また民の中でも参加する事業者の間で、それぞれ違いができてしまう危険性があるのです。
そうした危険性を回避するため、デザインガイドラインの共有という手法が用いられました。
一貫性を実現するためのデザインガイドライン
HARUMI FLAGのプロジェクト開始にあたって、まず最初に行われたのがデザインガイドラインの策定です。住居や共用施設などの主要な建物はもちろん、公園や道路などのインフラから街灯や植栽のあり方にいたるまで、このエリア内にあるすべてのものは、どのようなデザインであるべきかを定めたガイドラインです。官民を問わず、プロジェクトに参加する全員がこのデザインガイドラインを共有することによって、街全体のデザインコードの統一を実現したのです。これによって、公園や道路、住宅、エネルギー施設、学校、商業施設など、街を構成するひとつひとつのパーツがけしてバラバラになることなく、一貫性を持ってつくりあげられていきました。
一貫性を追求したからといって、似たような建物や施設が無機質に並ぶだけの画一的な街をつくりたかった、というわけではありません。一貫性は保っているけど、街の中の建物や施設はみんな個性がある。目指したのは、そういう街づくりです。そのためにHARUMI FLAGプロジェクトでは、日本の建築シーンをリードする気鋭のデザイナーを25人を起用。各デザイナーたちは、デザインガイドラインをつねに基準としつつも、それぞれの個性を遺憾なく発揮しました。その結果は、実際に実現したHARUMI FLAGの街を見れば一目瞭然。個性的な建物が並んでいるのに、街全体はしっかりと一貫性が保たれています。
プレイスメイキングという考え方
もうひとつ忘れてはならいないのが、「プレイスメイキング」という考え方です。プレイスメイキングとは、ふだん人々が生活の中で利用している公園や道路、商業施設といった施設やインフラを「居心地の良い空間」に変え、そこを行き来し利用する人の居場所をつくる、という考え方です。それによって街が単なる生活の場から、賑わいと交流に満ちた場となり、そこに暮らす人々の暮らしの質が高まっていくのです。
HARUMI FLAGは、このプレイスメイキングを大切にしました。何気なく通り過ぎるだけの道路や広場、一休みするために立ち寄った公園、その途中にある中庭の木陰なども、実は誰かのお気に入りの場所になるよう配慮して設計されているのです。「あそこに行けば何かある」「あの場所ならのんびりできる」という期待感やワクワク感を持てる。HARUMI FLAGは、そんな仕掛けの盛り込まれた街でもあるのです。
つながりを持った街
デザインガイドラインの策定と共有によって実現された一貫性は、中に一歩足を踏み入れてみればすぐに分かります。街区と街区の間に境界を感じさせず、街の中がひとつのつながりを持って開かれているのです。道幅の広さや緑の多さなどと相まって、街全体からゆとりや穏やかささえ感じられます。ぜひ一度、HARUMI FLAGを訪れ、その目で確かめてみてください。