官と民の連携が高める街の完成度
HARUMI FLAGは、別のコラムでも紹介したとおり、18ヘクタール、東京ドーム3.7個分という広大な敷地に、一気に街をつくりあげてしまうという壮大なプロジェクトです。これだけ大規模な事業はひとつの民間事業者だけではとても手に負えませんし、道路や広場、公園などの公共エリアは公共の事業として進めなくてはなりません。
HARUMI FLAGの場合は、東京都都市整備局、東京都港湾局、中央区などの官と、11社もの事業者からなる民という複数のメンバーが参加しています。これほど多くのメンバーが参加すると、どこかチグハグな印象を受けたり、統一性に欠ける点が目についたりするものです。例えば民間で整備した街路は美しくデザインされたすてきな歩道なのに、東京都が整備した自動車道路はアスファルトに黒いツギハギが見えてしまう、など。HARUMI FLAGでは、そうしたことが起きないよう、参加するメンバー全員が思いを重ね、ひとつのビジョンの下に事業を進めました。それによって、道路・広場・公園などの公共エリアも、各住居などの建物も、すべてが調和した心地よい景観や快適な住空間を生み出すことが出来たのです。
シームレスな街
HARUMI FLAGの中を歩いていると感じるのは、どこまで行っても境界線を感じない、シームレスな街であるということ。各建物やその中庭、街路、広場、公園まで、それぞれが個性的ではあるけど、けして違和感がなく統一されていて心地が良いのです。それは、照明や植栽といった細部においてさえ同じです。仕事や学校を終えてHARUMI FLAGの敷地内に戻ってくると、「あぁ、家に帰ってきた」という感覚になるはずです。
通常であれば公共事業として整備されるエリアと、民間事業者が整備するエリアとでは、デザインや質感が大きく異なるものですが、ここHARUMI FLAGでは、その境目を見つけることさえ難しいでしょう。
街の中の舗装デザイン、いわゆるランドスケープも官民で統一され、一つの連続した道路に見えるよう配慮されています。HARUMI FLAGは敷地も広く道路もゆとりがあるのですが、街の中に立って見回してみると、それ以上に広く感じられます。これは境目がないために生まれる視覚効果で、どこまでも道路や街が広がっているように感じられるのです。
街のシンボル「CENTER CORE」
HARUMI FLAGという街のシンボルともいえる存在が、街の中央部に広がるCENTER COREという広場です。市松模様のパターンでデザインされた直径約110メートルもあるこの広場は、各居住区や小学校と中学校のある学区が交わる中心地。これもまた官民が一体となって事業を進めたからこそつくれた街の象徴です。
また、PARK VILLAGEとSUN VILLAGEの間にはNIGIWAI PLAZAという、広場とコミュニティーセンターが一体となったスペースが設けられる予定です。そこは街のコミュニティー活動の場として、例えばバザーだったり、キッチンカーが並んだり、お祭りだったり、そんなイベントで賑わうのかもしれません。休日の昼間にふと立ち寄ったら、そんなイベントで人が大勢集まっているなんて、想像しただけでも楽しくなりませんか?
晴海の中心軸。メインストリート
CENTER COREから伸びる街のメインストリートは、中央部分に車道、その外側に自転車用道路、そのまた外側に歩道が配置された、全幅36メートルというゆとりのある広い道路です。車道、自転車用道路、歩道のすべてに統一感のあるシームレスさがあるのはもちろん、各道路を高さの異なる2種類の樹木で区切っているのも特徴です。車道と自転車用道路は高い樹木で、自転車用道路と歩道は低い樹木で区切られ、歩道と居住区も高い樹木で区切られています。そのおかげで自転車や徒歩で移動していると、並木道の中を歩いているのに視界が広々として開放感があり、なおかつ車道ともきちんと分けられているという安心感があります。こうした工夫もまた、官民が一体となって事業を進めたからこそ実現できた工夫です。
官民共同で実現した景観
こうして官民共同で実現した景観を台無しにしないよう、電線はすべて地下に埋設した共同溝の中に通されております。電信柱のせいで並木のリズムが崩れることもなく、ふと見上げると無粋な電線が視界に入ることもありません。
街の内も外もシームレスに
もうひとつHARUMI FLAGがこだわったポイントとして、街の中と外もまたシームレスにして、より多くの人が集まり、交流する場にする、ということです。そのため、HARUMI FLAGの居住者のためのエリアと、外から訪れる人のためのエリアを同じように力を入れて整備しています。街を囲む周辺には公園や、海沿いの遊歩道、そこに設置されたベンチや広場、子どもたちの遊び場など、人が集まりやすく交流しやすい空間があちこちに設置されています。街に住む人々が賑わい、街の外からも多くの人が訪れる。そして街がさらに活気にあふれていく、そんな設計がなされているのです。