津波が起こりにくい東京湾。でも油断をしないのがHARUMI FLAG
万が一の災害のひとつに地震や台風による津波・高潮があります。建物やインフラにも大きな被害が発生し、人命に関わることさえある災害です。幸い、東京湾は津波が起こりづらい場所であるといわれています。地図を見ると分かりやすいのですが、東京湾は太平洋からの入り口が狭いため、外から入ってきた津波が湾内を進むにしたがって拡散してしまうためなのだそうです。
だからといって、何も対策をしなくてよい、ということはありません。特にHARUMI FLAGは三方向を東京湾に囲まれた立地であるだけに、不安を感じる方もいるでしょう。ここでは、住民の安心と安全を守るために施されている津波・高潮対策について紹介します。
予想される最大規模を超える津波・高潮に備える
HARUMI FLAGでは、現在予想される最大規模を超える津波・高潮に備えるため、A.P.+6.5mの防潮堤を整備しました。
A.P.とは「Arakawa Peil」の略で、日本語では「荒川工事基準面」といい、東京湾の荒川河口域の潮位の最低水位を基準としたものです。東京湾の干潮時の水位も、おおよそA.P.0mとなります。A.P.+6.5mとは、東京湾の干潮時より6.5メートルも高い津波・高潮だということです。ちなみに、Peilはオランダ語で「基準」などを意味する単語で、水位を測る際の基準点を表す際に用いられる言葉だそうです。
東京湾では、津波・高潮などの被害から都民や東京の中枢機能を守るために、過去の大型台風や地震のデータをもとに基準を定め、必要な防潮堤などの海岸保全施設の整備が行われています。これらのデータを用いて行ったシミュレーションで予想された数値をもとに、HARUMI FLAG周辺で設定された防潮堤天端高さがA.P.+6.5mという数値です。
このA.P.+6.5mがどれくらいの安全度かというと、1703年に起きた「元禄地震」のときの津波の最大高さがA.P.+4.65mと推定されています。元禄地震はマグニチュードが最大8.2と推定されており、これは1923年の関東大震災のマグニチュード7.9を上回る規模でした。A.P.+6.5mは、東京湾が満潮のときに元禄地震レベルの地震による津波・高潮が来ても対応できる数値である、ということです。

景観とも両立した津波・高潮対策
HARUMI FLAGでは、海に面した三方に防潮堤を整備しました。同時に、再開発による道路と街区の盛土を行うことでA.P.+6.5mを実現しています。ただし、こうした防潮堤のために味気ないコンクリートの堤防がそびえ立つ、などということはしませんでした。
HARUMI FLAGのレインボーブリッジ側には晴海ふ頭公園が、豊洲側には晴海緑道公園がそれぞれあるのですが、それらの公園に比べて街区の土地は2メートルほど高くなっています。また、急な段差にならないよう、公園側から街区へとなだらかなスロープで繋がっています。このスロープの頂上、ちょうど土地が街区と同じ高さになったところに美しい遊歩道が整備されているのですが、この地下に強固な防潮堤が埋め込まれているのです。防波堤は築くけれども、けして剥き出しにはしていないわけです。このような、街の安心・安全と心地よい親水空間の景観を両立させる津波・高潮対策もHARUMI FLAGの大きな特徴になっています。